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2019.04.16

【レポート】「INFOBAR xv」プレミアムイベント at 北鎌倉・建長寺 〜禅寺で味わう「ツナガリすぎないゼイタク。」1日体験〜

「INFOBAR xv」プレミアムイベント at 北鎌倉・建長寺  〜禅寺で味わう「ツナガリすぎないゼイタク。」1日体験〜

うららかな陽気に恵まれた2019年3月20日、INFOBAR xv のコンセプトのひとつ「ツナガリすぎないゼイタク。」を体験するプレミアムイベントを開催いたしました。ご参加いただいたのは、高倍率の抽選をくぐり抜けた12名のみなさん。北鎌倉にある日本で最初の禅寺・建長寺にてスマホやネットから距離を置き、静かに自分と向き合う有意義な時間を体験します。

イベント終了後に参加者のお一人からこんな感想をいただきました。

「初めてこんなネットから離れる世界を体験して、何にも囚われないことが素晴らしく気持ちいい世界だということに気づきました。......今日のような非日常の生活が日常になることで、自分との対話がさらに生まれると思います。......」

一体どんなイベントだったのでしょうか?当日の様子をダイジェストでご紹介します。

建長寺

北鎌倉・建長寺。鎌倉時代の建長5年(1253年)に創建された禅宗専門寺院

INFOBAR xv NISHIKIGOI

建長寺・方丈庭園の池を背景に、凛とした空気の中で佇むINFOBAR xv NISHIKIGOI

開始時間は9:30。受付では参加者の皆様のスマートフォンをお預かりします。それと引き換えに「ツナガリすぎないゼイタク。」へと誘う和紙で作った和綴じのしおりをお渡しします。

最初の会場は建長寺の得月楼。車座になってお座りいただき、皆様揃ったところで自己紹介から始めます。初めて会う人ばかりですから、やはりちょっと緊張しますよね。少し緊張がほぐれたところで「坐禅体験」の会場、方丈(龍王殿)へ移動します。早春とはいえ、まだ少し冷たい廊下に心が引き締まります。

坐禅体験

坐禅体験

「坐禅体験」は、 臨済宗建長寺派総務部長 村田靖哲さんのご法話から始まりました。そもそも「"座"禅」は「"坐"禅」と書くのが正しいのだそうです。その「坐」という漢字をよく見ると「人」と「人」が向き合っています。これは「自分自身と向き合っている」ことを意味していると村田さん。このお話を聞いた時、「あっ」となりました。これまでずっと無意識に「"座"禅」と書いていたことに気づいてしまったんですから(汗)今日からきちんと「"坐"禅」と書くと心の中で誓ったのでした。もちろんこのレポートでも「"座"禅」でなく「"坐"禅」です!

坐禅をベースに生まれた瞑想法として欧米で流行し日本にも上陸した「マインドフルネス」に触れ、村田さんは「坐禅」は「マインドフルネス」と違い何か効能、効果を求めるものではないと言います。最近「マインドフルネス」を取り入れる企業も多くありますが、その目的は従業員の「生産性」や「創造性」を高めることだったりと、はっきりと効果を期待していますものね。「坐禅」と「マインドフルネス」の違いが端的に分かる印象深いお話でした。

その後、「坐禅」の基本、座り方、手の組み方、呼吸の整え方など丁寧に教えていただきます。「坐禅」といえば誰もが思い浮かべるのが、木の棒で背中を打たれている姿。あの棒の名は「警策(けいさく)」と言います。「警覚策励(けいかくさくれい)」を略して「警策」。眠くなったり、心が整わない時に警策を受けます。

警策を受けたい時は、打つ人(この体験では村田さん)が廻ってきた際に、互いに合掌をして頭を下げます。警策は左右の肩を2回ずつ計4回。私もやっていただきました。大きな音がしますが決して痛いことはなく、打っていただいた後は気持ち新たに再び「坐禅」に集中することができました。

早春の凛としたまだ少し冷たい空気の中、共に座っている他の人たちとの静かな繋がりをどこかに感じながら「今、ここ」に意識を向け自分自身と向き合う。それはとても新鮮な体験でした。60分の体験時間はあっという間に過ぎ去り、次のプログラム「書道体験」のため得月楼に戻ります。

書道体験

書道体験

半紙、文鎮、硯にお目にかかるのも、そして墨汁の匂いを嗅いだのもおそらく小学校以来です。それだけでなんだか感慨深いです。この「書道体験」の目的は、字を上手く書くことでなく、心穏やかに書に集中すること。

半紙の下には予めお手本が敷いてあります。うっすら透けて見える二文字の漢字は「錦鯉」。そうこれは何と言ってもINFOBARのイベントですからね(笑)筆に墨をつけお手本の「錦」そして「鯉」をゆっくりとなぞっていきます。子供の頃の習字の記憶には全くいい思い出がありませんが、今やってみると新鮮な心持ちに。

続いて、自分の心に浮かんだ好きな言葉を書にします。ところが、いざ書こうとするとその漢字の細かい部分が全く思い出せないんです(汗)。そんな時に便利なのが、INFOBAR xvに搭載されている「漢字チェック」機能。調べたい漢字を入力すると画面いっぱいに表示されるので、漢字の細かなパーツがはっきり分かります。これは便利です!(なんだかTVショッピングみたいになってしまいました)。

みなさん「穏」「陽」「風」「精進」「無心」など思い思いの言葉を書にしました。私は「無心」と書いた後、「茄子紺」「チェリーベリー」とINFOBARの色名称もせっかくなので書いてみました。最後に"丸"を一筆で描きました。禅における書画の一つ「円相」です。やってみたかったので、一人悦に入っていました。

精進料理

(上)村田さんのお話を伺いながら (左下)精進料理 (右下)けんちん汁

「書道体験」が終わると時間はもうお昼。みなさんお待ちかねの「精進料理」の時間です♪ 禅の世界では食事も修行です。本来は、食事中しゃべらない、音を立てないなどきちんとした作法があります。でもこの日はだいぶ大目にみていただくことに。さきほど坐禅のご指導をいただいた村田靖哲さんに「精進料理」について、そして「けんちん汁」についてお話を伺いながらお料理をいただきました。みなさんお馴染みの「けんちん汁」は、漢字で書くと「建長汁」。そう、実は建長寺発祥の料理なんです。

「けんちん汁」は鎌倉時代、建長寺を開山した南宋(中国)の僧、蘭渓道隆(らんけいどうりゅう)が野菜くずを無駄なく使うために考えられた料理。野菜くずを油で「炒めて」から煮ることで出来上がる「けんちん汁」。それまで「煮る」とか「焼く」といった調理法しかなかった当時としては、「炒める」という中国ならではの調理法から生まれた「けんちん汁」はきっと最先端の味だったんでしょうね。

さらに、建長寺の「けんちん汁」に入っているお豆腐は手でくずしたお豆腐が使われています。これは、修行僧が落としてくずれてしまった豆腐を蘭渓が「気にしなくて良い」と洗ってそのまま汁に入れたのが始まりなんだそうです。かたちのくずれたお豆腐だと、誰が多い誰が少ないと不平不満につながらないですよね。それが「普(あまね)く公平に」行き渡るようにという仏教の「食平等(じきびょうどう)」の教えに通ずるんですと村田さん。

村田さんの貴重なお話を伺いながらいただいた「精進料理」そして「けんちん汁」のお味は格別でした。ふだん野菜が全く食べられないという参加者のお一人もこの「精進料理」は完食!「けんちん汁」はみなさん続々とおかわりしていらっしゃいました♪ 

記念撮影

唐門の前で記念撮影

さて、美味しい「精進料理」でお腹が満たされた後は、外に出て唐門を背に記念撮影タイムです。この唐門は、芝・増上寺にあった徳川二代将軍秀忠正室、江(崇源院)御霊屋の中門を1647年に移築したもの。国重要指定文化財に指定されています。2011年に保存修理工事が終わり、ご覧の通りの金色に輝く絢爛豪華な姿を取り戻しています。

インスタントカメラ写真ワークショップ

インスタントカメラ写真ワークショップ

記念撮影の後は、建長寺境内を散策しながら「今」を切り取る「インスタントカメラ写真ワークショップ」です。4グループに分かれ、グループに1台ずつ配られたインスタントカメラLEICA SOFORT(ライカ ゾフォート)を首に下げて被写体を探します。

インスタントカメラ写真ワークショップ

各グループ毎の撮影テーマがINFOBAR xvで告げられました

散策開始直後、グループ内で予め決められた1名が持つINFOBAR xvに着信があり、グループ毎に異なる撮影テーマが告げられます。テーマは「静」「無」「空」「芽」の4つ。

スマホなら何枚撮ってもいいし、撮ったらすぐに画像を確認できますが、インスタントカメラはそうはいきません。10枚撮りのフィルムを3人でシェア。テーマに沿った被写体を慎重に決め、大切な1枚に全神経を集中する。スマホで撮る写真とは全く異なる体験ですが、思いのほかみなさんに楽しんでいただけたようです♪ 

撮影後は得月楼に戻りグループ毎に机を囲み、撮影した画像から「連歌」のように3枚を選んで1つのコンセプトにまとめプレゼンテーションしました。評価の高かったグループにはイベントの最後に素敵な賞品が贈呈されます♪

茶道体験

 慣れない正座で茶道体験

そしていよいよ最後のワークショップ、裏千家の河村先生による「茶道体験」です。

お菓子は、この日のために虎屋さんに特別注文して作っていただいた羊羹「錦鯉」。難易度の高い製法を駆使して、INFOBARの特徴的な柄を表現していただきました。ちょっとドキドキしながら羊羹を待ちます。試作品までは見ていたものの、何せ完成品と対面するのはこの時が初めて。やがて手元に運ばれてきた「錦鯉」羊羹の美しい仕上がりを見て一安心。白あんベースのその味は言うに及ばずそれはそれは美味でした♪

茶道ではお茶を飲む前にお菓子をいただきます。羊羹やまんじゅう、きんとんのような主菓子(おもがし)には濃茶(こいちゃ)、落雁や煎餅のような干菓子(ひがし)には薄茶(うすちゃ)というのが基本なんだそうです。

錦鯉羊羹

とらや特注「錦鯉」羊羹と黒文字

羊羹に添えられた楊枝のようなもの、これは「黒文字(くろもじ)」と言うんですね。「黒文字」という木を削って作られるのでそのまま「黒文字」と呼ばれます。嗅ぐとほのかにいい香りがします。

「黒文字」からできる精油はアロマや化粧品などでも使われています。精油の主成分は香水「シャネルNo.5」に使われているリナロール。「黒文字」を水につけて嗅ぐとより香りを楽しめますよと、赤坂の虎屋さんにお伺いした際に教えていただき、その場で「黒文字」と「懐紙」のセットを買って帰りました。

ところで「裏千家」とか「表千家」って何?と疑問に思ったことありませんか。「茶道体験」の中で参加者のお一人からもこの質問があり、河村先生にお答えいただきました。

茶道の流派で有名なのが、「武者小路千家」「表千家」「裏千家」の三千家。「わび茶」を完成させた千利休の孫、宗旦(そうたん)には4人の息子がいました。そのうち次男の宗守(そうしゅ)が「武者小路千家」を、三男の宗左(そうさ)が「表千家」を、四男の宗室(そうしつ)が「裏千家」を興しました。

宗旦の隠居に伴い後継として宗左が茶室「不審庵」を受け継ぎました。さらに宗旦の死後、宗室が宗旦の隠居所「今日庵」を受け継ぎました。「裏千家」の名は、「今日庵」が「不審庵」の裏側に位置していることに由来しています。そして「武者小路千家」は、宗家が京都市上京区武者小路通りにあることがその名の由来です。

流派により様々な作法の違いがあります。例えばということで、先生教えてくださったのが歩き方の違い。「裏千家」の場合は一畳を4歩で歩きますが、他の2つの流派は一畳を6歩で歩くのだそうです。これだけ聞いても、なかなか奥の深い世界ですね。

錦鯉羊羹

お土産の一つに「錦鯉」羊羹をお持ち帰りいただきました

これで「ツナガリすぎないゼイタク。」を味わう全てのプログラムが終了です。朝からスマホの画面を見ることなく一緒に過ごしたみなさんとの静かで豊かな心の繋がりを感じながら、始めと同じように得月楼で再び車座になりました。

まずはインスタントカメラ写真ワークショップの結果発表です。見事1位となったグループには、INFOBAR xvのイラストが胸元にあしらわれた特製INFOBARパーカーを進呈させていただきました。

そして今日1日の振り返り。みなさんに「あなたにとってのツナガリすぎないゼイタクとは?」をINFOBAR xvのポストカードに書いた上で1日の感想を一言述べていただきました。

最後にご参加いただいた感謝の気持ちを込めてみなさんにお土産を♪ 中身は『錦鯉』羊羹1箱(ちなみに重さ330g、INFOBAR xvおよそ3台分!)、au Design project15周年記念書籍『ケータイの形態学』「INFOBAR xvのかたちをしたSIMピン(2本セット)」などINFOBAR三昧です♪

そしてお預かりしていたスマホをお返しして、16:30過ぎに解散となりました。スマホのカメラで『錦鯉』羊羹を撮る時間も少しだけ取りました(笑)。

今回は12名というごく限られた方に「ツナガリすぎないゼイタク。」を体験いただきました。今後、もっと多くの方に体験いただけるかたちにアップデートできないだろうかと考え始めていますので応援いただけると嬉しいです。冒頭に紹介させていただいたものに加え、イベント終了後にいただいた感想をいくつか紹介させていただきます。

「今日はイベントを通じて「人生にはスマホが使えなくても楽しめる事が色々あるんだな」と実感しました。」

「このイベントを機に、自分が未経験なことでも臆せずに、チャレンジしていこうと思えるようになりました。」

「一日スマホと離れ、普通なら絶対できない数々の貴重な体験をさせていただく中で、自分が日々いかにスマホで写真を撮ったり、調べ物をしたり、人とつながろうとしているかということがよくわかりました。ツナガリすぎないゼイタク、まさにそのことが実感できたイベントでした。」

「スマホを返却して貰った後、通知の数が尋常ではなかったことを受け、この量をいつもリアルタイムで捌いていたんだなと思いました。SNSだけでなく、ニュース、メルマガも含めて繋がりすぎていた自分に気づきました。」

今回のイベントは、佐宗邦威(さそう くにたけ)さんが代表を務めるBIOTOPE社のみなさんと一緒に2016年から進めてきた「スマホ・SNSとのほど良い距離」を考えるためのリサーチ&ワークショップの集大成ともいえるものです。

佐宗さん、今回のイベントのファシリテーターを務めていただいた小林泰紘(こばやし やすひろ)さん、クリエイティブディレクター左右田智美(さゆうだ ともみ)さん、斎藤陽介(さいとう ようすけ)さんにはとりわけお世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。

佐宗さんは最近、新しい本を出版されました。タイトルは『直感と論理をつなぐ思考法』。先の見えないこの時代を生きる上での指針となる素晴らしい本です。今回のイベントの根底にある考え方とも無縁ではない内容です。「デザイン思考」「妄想」「ビジョン」あるいは「自分モード」という言葉にセンサーがピピッと反応した方は是非お読みになることをオススメします!

当日の様子をまとめた動画も公開いたしましたので是非こちらも御覧ください。

【動画】「ツナガリすぎないゼイタク。」@建長寺

「ツナガリすぎないゼイタク。」@建長寺 関連リンク

エッセイ『ツナガリすぎないゼイタク。』

TIME&SPACE記事「INFOBAR xvが提案する『ツナガリすぎないゼイタク。』 鎌倉建長寺で体験してきました」

建長寺公式サイト

虎屋公式サイト

BIOTOPE公式サイト